真黒石は水石観賞家の評価が高い石のひとつ。なかでも、滋賀県の琵琶湖を水源とする瀬田川産のものが好まれますが、瀬田川では現在、石の採取が禁じられています。
門の踏石と同じ鞍馬石ながら、沓脱石にはひときわ滑らかな肌と形状の石を採用。多くのお客様を迎えた鮒鶴の、おもてなしの精神と美意識がうかがえます。
檜皮を貼付ける場合、通常は檜の育成を考慮して、縦30cmほどしか剥ぎ取りません。これほど大胆な檜皮貼付け門はほかに例がないでしょう。
エレベーターホールの真上は網代天井という最高の建築意匠。なかなか気付いてもらえない部分にもおもてなしの精神が息づいています。
「川床」は京都の夏の風物詩。鮒鶴では毎年5/1〜9/30の期間に開催されます。
これほど巨大な川底石を、ほとんど手を加えずに沓脱石として利用できたのは稀少。当時の数寄屋大工や作庭家も喉から手が出るほど、最高級の石であったことは間違いありません。
-
これほど上質な鞍馬石は、本来なら数寄屋建築の広縁に横付けされるべき主役級。それを惜しげもなく門の踏石として、しかも門柱を食い込ませるとは贅沢な用い方です。
欄間は通常、賓客が奥の床の間座敷に通される際、次の間から見上げるもの。この門構えには、「門より内はすべて賓客を迎える奥の間である」との鮒鶴精神がうかがえます。
賓客を迎え入れる本館玄関の風格を表すものとして、軒先の入母屋破風の木鼻には、吉祥を表す瑞鶴の彫刻物と「鮒鶴」の屋号を陽刻した獅子口が見られます。
望楼建築の本館に、昭和初期モダニズム洋館建築の新館が付随していることから、西側の景観も秀逸だったことがわかります。かつては眼下に高瀬川の営みがあり、その向こうには、京町家の甍が美しく広がっていたはずです。
レストランでは、新館増設時に採用されたアールデコの意匠と、現代風のインテリアの融合が見られます。